ファウスト交響曲/アンセルメ(指揮)
2024年 05月 21日
リストという作曲家は、個人的に知名度の割にはイマイチだと思っている。ヴィルトゥオーゾの作曲家なので、知名度は一流でも、音楽が外面的で浅いのだ。これはパガニーニも同様。深さや精神性をないものねだりをせず、B級作品専門の作曲家と割り切れば、逆に音楽が楽しめるようになる。作品のなかでも『ファウスト交響曲』が一番の大作だ。なかなか馴染めずにいたが、アンセルメの録音に出会うことで、消化できるようになった。要は「ファウスト」・「グレートヒェン」・「メフィストフェレス」の3つの交響詩を3楽章で括った交響曲として聴けばいいのである。
リスト:ファウスト交響曲 S.108(録音:1967年9月)
ヴェルナー・クレン(テノール) S.108
ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団 S.108
スイス・ロマンド管弦楽団
エルネスト・アンセルメ(指揮)
録音場所:ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール(ステレオ)
ファウスト交響曲
全3楽章から構成され、全曲の演奏時間は合唱のない管弦楽だけの第一稿が約70分、第二稿の男声合唱付きが約75分である。
第1楽章「ファウスト」(Faust)
レント・アッサイの序奏を持つソナタ形式で書かれており、真理を熱望するファウストが5つに表現されている。序奏部のチェロとヴィオラで始まる第1の主題は、後の十二音技法を先取りした大胆な主題であり、沈思瞑想にふけり、懐疑し煩悶するファウストの姿を象徴する。主題のアレグロ・アジタート・エド・アパッショナートでヴァイオリンがエネルギッシュに奏する第2の主題は、情熱的で闘争的なファウストが活写されている。オーボエとクラリネットの下行音型で始まる第3の主題は、愛に対する欲求を示している。クラリネットとホルンで始まる第4の主題は、第1の主題の後半部からもたらされたもので、自然と人生の愛を歌うファウストの姿である。金管が鳴り響く壮大な第5の主題は、ファウストの英雄的な側面を表している。
第2楽章「グレートヒェン」(Gretchen)
三部形式で、第1楽章とは対照的にグレートヒェンの愛らしく、いじらしい性格が描写されている。新しくグレートヒェンの2つの主題が加わっている。
第3楽章「メフィストフェレス」(Mephistopheles)
第1楽章より複雑であるが、ソナタ形式に則っている。全てを否定し、人間性を否み、戯画化し、卑しめ、破滅させるメフィストフェレスは、ファウストのネガティヴな姿を投影したもの。この楽章では、新しい要素がほとんど登場せず、ファウストの主題がパロディ化した不気味でグロテスクな雰囲気によって、メフィストフェレスの相貌を凝縮している。この主題のパロディ化は、ベルリオーズの『幻想交響曲』の第5楽章における固定楽想(イデー・フィクス)の扱いに通じるところがある。
「神秘の合唱」に入ると、天の神が悪に打ち勝ち、暗黒から光が差し込んで、大団円を迎える。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
by yoshisugimoto
| 2024-05-21 15:19
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