『奇跡の丘』1964年
2024年 05月 20日

ヴェネツィア国際映画祭の審査員特別賞、国際カトリック映画事務局賞を受賞。
概要
「マタイによる福音書」に基づいて処女懐胎、イエスの誕生、イエスの洗礼、悪魔の誘惑、イエスの奇跡、最後の晩餐、ゲッセマネの祈り、ゴルゴダの丘、復活のエピソードが描かれている。
Pier Paolo Pasolini
1922-1975。イタリアの映画監督・詩人・小説家。ボローニャで軍人の家に生まれる。母方の実家があるカザルサで過ごした時間も多い。ボローニャ大学卒業後、イタリア共産党に入党、中学校教師をしていたが、学校と党から追われ、母とともに1950年、ローマに移住。1956年、フェリーニ監督『カビリアの夜』の脚本を共同執筆。ヴィアレッジョ賞を受けた詩集『グラムシの遺骸』など次々に詩集を出すかたわら、『生命ある若者』などの小説で文学界を賑わす。映画『アッカトーネ』で監督となり、『奇跡の丘』『アポロンの地獄』『テオレマ』などのフィルムは一時代を画した。1975年11月1日夜から2日早朝にかけて、ローマ郊外のオスティア海岸で殺害された。没後、遺作となったフィルム『ソドムの市』が公開され、未完の小説が刊行され、伝記や研究書も相次いだ。1993年に全詩集、1998年より全集が刊行され、2022年には生誕百年を記念して展覧会やシンポジウムが開催されるなど、芸術家としての評価はますます高まっている。(みすず書房サイトより)
イエス映画の最高傑作。最高傑作かどうかは異論もあろうが、少なくとも個人的には至高の作品。『七人の侍』が映画史上の傑作であるのと同様、この作品も不滅の名品であることは疑いない。プロの役者を一切使わず、撮影は極めて静的だが、それが圧倒的な説得力を持つ。ただし、登場人物はすべてイタリア人で、イタリア語を話すのはやむを得ない。そこのところは割り切っているように思える。音楽もクラシック名曲(バッハ、モーツァルトやプロコフィエフ)の流用だが、この極限に宗教的なテーマにはかえってふさわしい。パゾリーニ監督は無神論者とのことだが、そういうことも一切感じない。
イエス映画の最高傑作。最高傑作かどうかは異論もあろうが、少なくとも個人的には至高の作品。『七人の侍』が映画史上の傑作であるのと同様、この作品も不滅の名品であることは疑いない。プロの役者を一切使わず、撮影は極めて静的だが、それが圧倒的な説得力を持つ。ただし、登場人物はすべてイタリア人で、イタリア語を話すのはやむを得ない。そこのところは割り切っているように思える。音楽もクラシック名曲(バッハ、モーツァルトやプロコフィエフ)の流用だが、この極限に宗教的なテーマにはかえってふさわしい。パゾリーニ監督は無神論者とのことだが、そういうことも一切感じない。
映画のなかでは、イエスが一貫して支配階級の律法学者とパリサイ人を批判するとともに、自分の命の終わりを予言する。あの生き方を続ければ必然的に終わりが全うできるはずがない。しかし、そうしなければならないほど世の中が乱れていたのも実感できる。とくにローマの圧政に苦しむ中で、ヘロデ大王の幼児殺戮などは言語同断。律法学者たちが抗議した様子もなく、黙認したと考えられる。一事が万事、孫娘のサロメが座興で洗礼のヨハネの首を所望し、それが実現してしまうわけだ。群衆も無知蒙昧にして、バラバを選択し、イエスの処刑を支持する。
なおこの作品はレンタルビデオとしては在庫がなかったが、日本語字幕版がYoutubeで無料視聴できた。タダで見ることができる世紀の大傑作なのである。
by yoshisugimoto
| 2024-05-20 11:46
| 映画
|
Comments(0)