人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

録音を聴く

クラシック音楽とジャズとオーディオと歴史映画のブログ [杉本良明]


by yoshisugimoto

FE126NVかFE108NSか

FE126NVかFE108NSか_b0109511_08523640.jpgFE126NVかFE108NSか_b0109511_08523676.pngFE126NVかFE108NSか_b0109511_08523611.jpgFE126NVかFE108NSか_b0109511_08523622.pngだいぶ前になるが、FE208SSのD58をマンション6畳で使っているのを聴かせてもらったことがある。マンション6畳だから小音量しか出せない。低音は出ないし、中高音は粗いし、巨大なエンクロージャーの圧迫感があって、音場感もよくない。こりゃ最悪のつかいこなしだなと思ったものである。本人としたらD58はある意味長岡さんの最高機種だから、無理をして入れたに違いない。

6畳というのは十分快適で、決してオーディオのできない空間ではない。しかし、広いともいえない。ここのところを弁えてスピーカーを選定すべきだ。どんなエンクロージャーであっても6畳でフルレンジを使うなら16cm以下がマッチする。20cmフルレンジは大きすぎるし、中高音も良質とはいえない。低音を伸ばしたいなら、20cmにするよりは、サブウーファーやASWを使ったほうがいい。16cmのバックロードホーンは6畳には上限の大きさだが、別置きツィーターが必要になる。これは他にもスピーカーを鳴らしたいときには取り回しに不便だ。となると、10cmや12cmで別置きツィーターなしとしたほうが得策だ。なお、スワンタイプは音場再生には優れているが、他のスピーカーを置くことを一切あきらめることを要求するストイックなスピーカーと考えたほうがよい。

最近FE108NSというダブルコーンのフルレンジが発売になった。バックロードホーン向け強力タイプだ。しかし、能率が87dBと異様に低い。そこでフォステクスの代理店であるエクスペリエンスに問い合わせてみたところ丁寧な返事を頂戴した。大いに参考になるので、文面の一部を転載させていただく。
製品名: FE108NS
件名: 能率の低いのが気になります
お問い合わせ内容:
予定しているエンクロージャーはブックシェルフ型D102です。従来のFE108EΣでは90dBありましたが、今回は87dBとFE83NVなみ。FE126NVだと92dBと5dBの開きがあり、むしろこちらのほうがバックロードホーンの真価を出せるのではないかと思案しています。聴きます音楽はジャズですが、両者の比較をお願いします。
以下がその回答。

FE108EΣとの比較における FE108NS
スペック一覧に表記されたSPLだけで比較しますと確かに能率は低くなっています。FE108EΣと比較した場合は低域はほぼ同じ(測定基準が異なりますので若干は下がっているかもしれません)ですが、中域の能率が抑えられており相対的には低音はよく出るようになっています。

近年のフォステクスは従来「バックロードに適したユニット」とされていた概念からは脱却しつつあり、より本質的な改良を施すようになってきています。無闇に低いQts(Qo)、無闇に軽い振動系といった要素は少なくなりました。従ってスペック値をご覧になって杉本様のような印象をお持ちになるのはごもっともかと思います。スペックから受ける印象は、一方ではその通りでありまたある意味誤解を生んでいる点もあります。以下ご説明申し上げます。

EΣシリーズとNSシリーズの特長
これまでのフォステクスのバックロードホーン専用ユニットは中域から高域にかけての突き抜けるような音が特徴でした。できる限り磁気回路を強化し軽くて動きやすい振動系を採用することにより、それらを実現していました。低い Qo/高い能率/強力なBL値 は、数値面では一見「凄い」印象を受けますが、一方でリニアリティや高域の滑らかさ・潤いといった点は相当程度に犠牲にせざるを得ませんでした。滑らかさや潤いといった点よりも「突き抜ける心地よさ」を求めるユーザーもいらっしゃると思いますので、NSシリーズが登場した後も引き続き EΣ シリーズは残っています。(NS は EΣ の後継ではなく並行して販売されます。一方 En シリーズは方向性を NS のようなテイストに変えた上で NV となりました)EΣ に見られるような特長に「バックロードの真価」を見出すような場合(「バックロードの」と言うよりは「フルレンジの」と言うべきかもしれません)には、むしろ EΣ を選択するのが良いと思います。

一方で、従来通り大きなホーンを駆動する力を備えながら、それ相応の中域のレベル、質の高い高域(ここで言う「質」とは滑らかさや潤い)を併せ持ったのが NS です。FEシリーズですのでクリアで澄んだ高域は備えていますが、過剰に能率やダンピングを高めるのではなく、ある程度はそれらを抑制的に調整することで質感を追求しています。スペックだけを見て判断されがちであるため、かつては「とにかく Qo は低く、SPL は高く」ということがあったと思います。近年ではそれらの「数値」そのものはほとんど重視されていません。(結果としての Qo であり、能率)そうした数値も含めて追求されていく商品群は EΣシリーズや、そのシリーズの思想を継承する限定ユニットなどで実現されていくかと思います。それだけではオーディオ的な発展が少ないため NS ではそれとは異なる方向性での進化が図られています。

どちらを選択されるかはお好みで、ソースによってはそれぞれに優位点があると思います。ソースを選ばないオールラウンドさや、ごく一般的なオーディオ的・音響的な観点からしますと NSシリーズが優れていると言えます。長岡氏推薦盤などについては EΣ や従来のスーパーシリーズに優位点がありますが、それらのソースを NS や Solシリーズなどの近年のモデルで聴くとそれはそれで新しい発見もあります。

FE83NV との比較における FE108NS
口径や磁気回路の違いから、ホーンの駆動力には歴然とした差があります。FE83NV はバックロードホーン用としては中域以下がモッタリとした雰囲気のある穏やかな音調になりそうです。
数kHz 以上の特性も FE83NV は右肩上がりというよりはフラットです。ハイスピードで飛び出してくるような低音+フルレンジならではのクリアで軽快な中高域という感じではなく、ゆったりとした中低音と穏やかで品のある中高音といった感じです。(比較論ですので、一般的には軽快で爽やかな中高音と言えると思います。また小口径なので「ゆったりとした」というのも FE83En 以前の FE83 と比較した場合です)

FE126NV との比較における FE108NS
FE126NV は FE83NV ほど穏やかな設計ではありません。低域の駆動力はかなりありますので、こちらはある意味 NS シリーズや EΣシリーズに肉薄するほどのバックロードへの適性があります。ただ口径差のわりに駆動力は抑えられており、低音のスピード感などは FE108NS や FE108EΣ と同等ですが、中域では FE108EΣには及ばず FE108NS と同程度、高域では(これは口径差に依存する問題ですが)10cmの2モデルの方が過渡特性に優れていると思います。もし FE128NS というモデルがあったとすれば、高域にかけての音圧はさらに上昇し、よりメリハリのある中高音を再生すると思われます。(過渡特性はあまり変わりません)従来的な意味でのいわゆる「バックロードらしさ」は FE108NS よりも FE126NV の方があると言えるかもしれません。

音圧特性の比較
以下が音圧特性の比較です。(注記欄で FE108EZ とあるのは FE108EΣ 、FE83V とあるのは FE83NV です)なお FE108EΣ だけが従来の測定方法(JIS箱)であるため正確な比較ではありません。絶対値よりも低域/中域/高域の相対的なバランスをご覧いただくとイメージしやすいかもしれません。中域のディップ(特に大きいのは FE83NV の2kH あたりのディップ)はロードがかかることでほぼ埋まります。
FE126NVかFE108NSか_b0109511_07432635.png

エンクロージャーについて
D-102 は角形フレーム用に設計してあります。円形フレーム用としては D-102MkII となります。ちょうど先週ですがD-102mkII に FE108NS を入れて試聴しました。フロア型のように十分な開口サイズを持つバックロードホーンと比較して D-102mkII は若干低音のレベルが低い傾向がありますが FE108NS では全く不足感はなく、レンジでは及ばないものの、量感に関しては FE108-Sol 搭載のスーパースワンに迫る部分もあると感じました。むしろ D-102mkII にはベストマッチだと感じています。能率が低いことによる不満は特に感じませんが、EΣと比較すると前述のとおり中高域にかけての突き抜けるような感じはありません。したがってそこに価値を求めてしまうと若干大人しいとお感じになると思います。

個人的にはバックロードホーンならではの全域にかけてのスピード感がありながら、ストイック過ぎない低音の量感と質感、滑らかで品のある中高音がバランスしており、素晴らしい性能であると感じます。なお、D-102 は背面側のホーンで 上→下 と来たあと、前面側に90°折れて開口しますが、この背面側のホーンの 上→下 の平行面での定在波が目立った悪影響を及ぼすことがあります。(300Hzあたり) ここは底面の吸音材のコントロールで抑えることができ、特性上も聴感上も相当程度に改善します。ご存知かもしれませんが、ご参考まで。

FE108NS は これから D-101S での試聴を行いますが D-101S では若干ローブースト気味となり、もう少し「締めたい」と感じるのではないかと予測しています。以上 若干取り留めのない内容とはなりましたが参考にして頂けますと幸いです。さらに疑問点やご質問などございましたら折り返しお問い合わせください。何卒よろしくお願い申し上げます。
以上を何度か繰り返し読んみた。FE108NSの能率の低い件の問い合わせは多いに違いない。文面も前もって準備されていた感じがする。先方はFE108NSが一押しのようだが、自分にはFE126NVが合っているなと判断した。バックロードホーンらしい音を出すのが今回の目的だから、能率は少しでも高いほうがいいし、振動板も12cmと一回り大きいのも魅力だ。実際に鳴らしてみて期待を裏切らない音が出ている。ハトメをなくした関係で上下がわからなくなったが、音は間違いなくより高品位に改善されている印象だ。

Commented by mameshiba at 2022-12-07 12:02 x
はじめまして。FE126NVの情報を探していましたところ、このブログにたどり着きました。大変参考になりました。感謝します。
Commented by yoshisugimoto at 2022-12-07 12:58
ホントは転載はいかんのですが、この情報を欲しい人は自分を含めて多いに違いないと思いました。お役に立てたなら幸いです。
Commented by mameshiba at 2022-12-07 17:41 x
こういう情報はFOSTEXさんから公式に発表していただきたいものです。
名前
URL
削除用パスワード
by yoshisugimoto | 2020-09-23 07:53 | オーディオ | Comments(3)