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録音を聴く

クラシック音楽とジャズとオーディオと歴史映画のブログ [杉本良明]


by yoshisugimoto

工業製品か、工芸品か

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入江順一郎というオーディオ評論家がおられた。死去してからずいぶんと経つが、使用していたのがSX-900である。私は1995年発売のSX-V7を使用しているから、入江さんに近いと思っている。

このあたりのオーディオは工業製品だ。しかし、昨今のハイエンド?スピーカーは同じく工業製品であっても工芸品に近い。つまり、製造原価で商品を理解することが意味なしということ。投入されたノウハウや意匠、ブランドといったものが、大きな意味を持つ。工芸品を使う人、保有して楽しむ人は世間一般では趣味人と言われる。

乱暴な言い方になるが、オーディオは価格が何十万円のうちはまだ工業製品だ。しかし、百万円を超えたらそれは工芸品である。同列にとらえられない。価格はあってなきがごとしである。ステレオサウンド誌は工業製品も一応カバーしているが、主として工芸品のための雑誌である。ブランド物の高級ファッションや高級車も工業製品というよりは工芸品だ。

といって、工芸品をけなすつもりはない。工芸品は工業製品に趣味としての「夢」を付与する。その意味では工業製品にも貢献している。「夢」がなくなると、日用品、つまりコモディティになってしまう。たとえば白物家電は日用品だ。オーディオはコモディティになってはつまらない。そうならないのは工芸品のお陰である。冷蔵庫や洗濯機、エアコンには工芸品は見当たらない。

私もついこの間まではマッキントッシュのプリメインアンプを使用していたが、こちらは定価が百万をちょっと切る程度、工業製品と工芸品の中間の位置づけであったと思う。修理にも2ヶ月以上もかかるが、そんなことではとても工業製品とは呼べない。それでもユーザーは辛抱強く待つのである。私はさすがにイヤになり、マッキントッシュは売却した。代わりに来たのが、手作りのSICMOSアンプである。こちらこそ工芸品といいたいところだが、造ってくださった方は、製造原価のみ請求されたので、やっぱり工業製品に含まれると思う。

私個人はあくまで工業製品としてのオーディオ製品に興味がある。現在、私の家にあるオーディオ機器はケーブルも含めて、すべて工業製品である。ハイエンド・オーディオは工業製品で十分可能である。工芸品は特に必要ないが、趣味の世界だから使いたい人は使えばいい、と思っている。工業製品愛好者の立場から言っておくと、工芸品に工業製品が敵わないとは思っていない。工業製品を工芸品の域に高めるのは使いこなしのセンスである。

しかし、当時のSX-900は今から見ても、惚れ惚れするようないい商品である。もちろん工業製品である。このころのオーディオは工業製品を工芸品と錯覚させるプラスアルファが顕著だった。お陰で薄利のため大半のメーカーが淘汰されてしまった。もちろんこうしたプラスアルファは今の製品にもあるのだが、昔ほどではない。こういう商品が中古でしか手に入らないのは、時代の流れとは言え、残念なことである。

VICTOR SX-900\220,000(1台、1988年11月発売)
\204,800(1台、1990年頃)

方式3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・フロア型
ユニット低域用:31.5cmコーン型
中域用:6.5cmドーム型
高域用:3cmドーム型
インピーダンス6Ω
最大入力150W
300W(瞬間最大)
周波数特性27Hz~50kHz
クロスオーバー周波数500Hz、4.3kHz
出力音圧レベル91dB/W/m
外形寸法幅440×高さ850(スタンド高さ100mm含む)×奥行369mm
重量43.0kg(スタンド含む)
付属スピーカースタンド
Commented by 雪まるだ at 2016-03-27 09:55 x
自分は利益を求めていれば全て工業製品だと考えています。けれどその工業製品の中には芸術的な美しさがあったりするのも事実です。でもメーカーが作って利益を出せばやっぱり工業製品としか・・・。
楽器も同様ですが更に線引きが難しくなっちゃいますね♪
Commented by yoshisugimoto at 2016-03-29 18:25
そうですね。線引きは難しいです。
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by yoshisugimoto | 2016-03-25 06:48 | オーディオ | Comments(2)